「宮永岳彦記念美術館」では、宮永作品を順次、展示しています。
より多くの皆様に、この貴重な文化芸術資源を知っていただくため、「Miyanagaコレクション」と題して、宮永作品の紹介をしています。

ぺんてるサインペンポスター
解説
1963年に発売され、第3の筆記具として世界的に大ヒットした「ぺんてるサインペン」のポスターです。宮永はサインペンの市場導入時から広告デザインを担当しました。
ぺんてるとの出会いは、1951年頃。地下鉄で童画が描かれた松坂屋の中吊りポスターを見かけたぺんてるの担当者が、松坂屋に問い合わせたところ、当時宣伝部に所属し童画のポスターを制作した宮永を紹介されました。その後、「ぺんてるくれよん」の広告デザインの依頼を受け、広告用に童画を描きました。当時描かれたキャラクターの「ぺぺとるる」は、今でも「ぺんてるくれよん」のパッケージとして受け継がれています。
かわいい童画や躍動感あふれる人物像に、写実的なものから抽象的なものまで、様々なデザインを優れた画力で描きわけ、依頼者の要望を的確に表現する。そんな宮永に、グラフィックデザインの仕事の依頼が殺到しました。多忙な中、並行して油彩画の制作も行う宮永に対して、「器用貧乏」と揶揄(やゆ)する声もありましたが、「器用貧乏が勝つか不器用が勝つか、勝負してやる」と闘志を燃やしました。
本展では、ぺんてるくれよんのパッケージや海外向けに制作されたぺんてるのポスター、同時期に描かれた油彩画などを併せて展示しています。宮永の多彩さを、ぜひ美術館でご覧ください。
無題(寄贈)
解説
民族衣装のような服の女性が凛とした表情で一点を見つめています。横顔に光が当たり、影になる髪の毛は柔らかく表現されていて、晩年の宮永の美人画を思わせる、無造作で大胆な筆致になっています。
この作品は東京都内にお住いの数原俊男様のご厚意により当美術館にご寄贈いただきました。ご寄贈に際し、頂戴したメッセージをご紹介します。
私の父が宮永岳彦先生にご指導頂いたご縁で、父から譲り受けた絵です。今までこの絵は、我が家の2階に昇った真正面に飾ってありました。
階段を昇りながらふと見上げると、「彼女」がいます。楽しかった、腹が立った、疲れたぁ〜 ‥‥
色々な日々の感情を、いつもさりげなく受け止めてくれました。
私の父が慕った宮永先生のふるさと、私たちが大変懇意にさせて頂いている方も秦野に住んでおられます。
私にとってとても身近に感じるこの地に、「彼女」の新しい居場所を求めたいと思いました。
聖〈べラスケス「王女マルガリータ」想〉

解説
この作品は、スペインのバロック絵画を代表する画家ベラスケスの「王女マルゲリータ」に着想を得て描いたもので、「回顧のルネッサンス」シリーズの1作です。「民族衣装」「鹿鳴館」「回顧のルネッサンス」シリーズと、古典絵画への挑戦を続けていた宮永は、試行錯誤を重ね、水墨画のぼかしなどの技法と西洋風油彩技法を見事に融合させた独自の作風を確立しました。
左からやさしい光が差し込み、その光と影の効果が、王女の柔らかい髪の質感や肌の透明感、衣装や背景の重厚さを際立たせています。朱色や金色といった豪華さを彩る色を多く使用していますが、決して派手になり過ぎない抑制のきいた落ち着きがあり、そこに宮永の優れた色彩感覚や構成力を見ることができます。
晩年、油彩に専念した宮永ですが、王女の凛としながらも愛らしい顔は、それまで描いてきた童画の世界を思わせます。