2025年1月~
問い合わせ番号:17350-1588-7594 更新日:2025年4月1日
「宮永岳彦記念美術館」では、宮永作品を順次、展示しています。
より多くの皆様に、この貴重な文化芸術資源を知っていただくため、「Miyanagaコレクション」と題して、宮永作品の紹介をしています。
- 現在開催中の展示企画は、「衣装でみる宮永岳彦~伝統と流行~」展のページへ
甲府商工信用金庫1969年カレンダー
解説
鮮やかなピンクのワンピースを着た女の子がポーズをとっています。ワンピースの襟やすそは黒いレースで縁取られ、かわいいだけの子供服とは違うセンスが感じられます。しかし、三つ折りのソックスとベルトの靴、髪の毛にも赤いリボンで少女らしさは損なわれていません。肩に乗せた黄緑のセキセイインコで青みを加えて絵が仕上がっています。
この絵は金融機関のカレンダーとして描かれたものです。当時、顧客に配布するカレンダーを一枚ものと限定する協定を各銀行が結んでいました。斬新な感覚のデザインで完成度の高い宮永の作品はとても人気があり、印刷会社の担当者が秦野のアトリエにつめかけ、カレンダー原画を奪い合うといった伝説的なエピソードもありました。
宮永が手がけた多くのカレンダーは、年月が経った今でも新鮮で、生き生きとした子供の表情は見る人を優しい気持ちにしてくれることでしょう。
《熊野》
能の「熊野(ゆや)」は、平家物語を典拠とし、華やかな春を背景にして憂いに沈む美しい女性の心の動きを描いた演目です。
「油絵でもって能自体の重厚さを出せまいか」との思いから、宮永は日本の伝統芸能である能に興味を持ち、能楽堂に通って作品を制作しました。ここに描かれている「熊野」は、老母を思う熊野の気持ちや清水寺から眺める京の春の情景などが情緒豊かに表現された能です。宗盛と熊野が清水寺へ花見に行く場面では、美しい牛車の作り物(舞台装置)が登場します。宮永はその場面を、面と線を使った大胆な筆遣いでキャンバスに表現しました。
能で使用される衣装を能装束と呼びます。代表的なものは、女性役の上着として用いられる唐織(からおり)で、伝統的な格式と絢爛豪華さにおいて世界の舞台衣装の中でも最高峰といえるでしょう。女性の装束では赤が入っているものを「紅入り(いろいり)」、入らないものを「紅無し(いろなし)」と称し、紅入りなら若い女性、紅無しなら中年以降の女性と区別しています。今作品で描かれている赤色が印象的な装束は、若い女性の役であることを表しています。
《DENMARK 雅》
解説
1970年代に入り宮永は、油彩画に専念し独自のスタイルを模索します。「流行に左右されず、いつの時代も不変なものを」と考えた末にたどり着いたのが、民族衣装でした。
宮永は「自国の民族衣装を違和感なく着こなせるのは、その国の女性である」という持論から、各国の大使館を訪ね、衣装とモデル探しに奮闘します。本作品もデンマーク大使館員夫人に衣装を借り、夫人をモデルに制作されました。
その画風は、それまでのフラメンコを題材にした強烈な色彩と情熱的で躍動感あふれる作品から一転して、ひっそりと静的で古典的な表現へと回帰したものでした。女性の表情、爪の先、背後の壁紙の模様まで詳細に描写され、このころから光と影への意識がうかがえます。
そして、この作品から始まる民族衣装シリーズは、試行錯誤を経て、華麗で優雅な女性美あふれる宮永芸術の先駆けとなりました。
『ブレリアス』
解説
朱色の画面いっぱいに描かれたフラメンコダンサー。流れるような描線からは、衣装が翻り風を切る音や足を踏み鳴らす音、そして会場の熱気が伝わってきます。
“動き”に対して強い関心を持った宮永はこの主題に熱心に取り組みました。中でも、一番動きが激しい舞踊と考えたフラメンコを題材にするようになり、取材のために本場スペインのダンサーが出演していた新宿の「エル・フラメンコ」に通い詰めたほどでした。舞台上の研ぎ澄まされた空気とダンサーの一瞬を描くことに没頭し、1966年頃から3年ほどの間に渡りリズム感あふれる動的な作品を多数制作しました。
こうした宮永のこだわりは、描く人物の衣装にも及びました。時代を取り入れたもの、伝統的なドレスや民族衣装など、その種類は多岐にわたります。こだわるあまり、思い描いた衣装を準備するのに苦労したというエピソードも残されています。
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