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2023年1月~12月

問い合わせ番号:16709-8330-2623 更新日:2023年12月28日

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 「宮永岳彦記念美術館」では、宮永作品を順次、展示しています。

 より多くの皆様に、この貴重な文化芸術資源を知っていただくため、「Miyanagaコレクション」と題して、「広報はだの」とともに宮永作品の紹介をしています。

『舞踏会への誘い』

解説

 優雅なロココ調のドレスを着た三人の女性が屋外でくつろいでいるこの作品は、民族衣装シリーズから鹿鳴館シリーズへと発展していく過渡期の一枚になります。三島由紀夫原作の舞台『鹿鳴館』にインスピレーションを感じた宮永は、豪華絢爛なドレスをまとった女性を多く描き、それは鹿鳴館シリーズと称されました。

 一見すると粗く見える筆づかいで描かれたドレスですが、少し離れてみると襟元のレース部分は繊細な模様に見えます。その特徴は美人画の制作を追うごとに際立つものになっていきます。

 足元の花をそっと見つめる女性の表情や光が当たった様に明るい肌の質感など、後の宮永が描く美人画を彷彿させます。

 また、この絵は、宮永がはじめて100号以上の大作に取り組んだ記念すべき作品でもあり、「粗めのキャンバスを使ったので、散々てこずって苦労した」と、後に回想しています。

広報はだの令和5年12月1日号掲載 

『YUGOSLAVIA 宴』 

ユーゴスラビア

解説 

 世界各国の民族衣装をテーマに女性美を追求した、民族衣装シリーズ。「流行に左右されない永遠のもの」として民族衣装に辿り着いた宮永は、各国の大使館をまわって衣装の調達やモデル探しに奔走しました。

 作品の画面を支配する静かな空気。女性の横顔は光を受け、ブロンドの髪は輝いています。白いレースと黒いビロードの対比が光と影の効果をより強調し、腕に巻いた赤いリボンは可憐さを演出するアクセントとなっています。

 精密な描写と色彩の明暗が、ロマンチシズムを表現する女性の美しさを描き出していて、まるで絵と同じ空間にいるかのような感覚をおぼえるのではないでしょうか。

 モデルとなったキャロル・マクレーンは、日本で英語教師をしていたアメリカ人女性です。彼女との出逢いによって宮永の感性はおおいに刺激され、古典回帰を意識した作品を次々と描いていきました。1973年制作。

※ 広報はだの令和5年11月1日号掲載予定でしたが、紙面の都合により見送りました。

『茅ヶ崎風景』 

茅ヶ崎風景

解説 

 1956年までの裸婦連作から一転、宮永は風景画に挑み始めました。同時にカレンダーや挿絵、表紙画も手掛けるなど多忙な日々の中、心の安らぎは愛車プリムスに乗ってのドライブでした。秦野からほど近い箱根や湘南は宮永の癒しの場であり、当時の茅ヶ崎は今では考えられないほど荒涼だったそうです。しかしそのような風景は、よりいっそう宮永の創作意欲をかき立て、画家として新たな境地へ踏み出すきっかけとなりました。

 強風に植物がなびき、吹き荒れる風の音まで聞こえてきそうなほど臨場感たっぷりに描かれた筆致は大胆で、画面と格闘する宮永の気迫を感じます。また、上部の朱色に塗られた背景と二隻の船は、何とも言えぬ寂寥感が漂い、秋の終わりと冬の始まりを予感させます。

 そして、第11回二紀展に出品されたこの作品を含む他1点で、念願の二紀会委員に推挙されました。宮永38歳の秋でした。1957年制作。

広報はだの令和5年10月1日号掲載

ぺんてるクレヨンパッケージ

 

 

ぺんてるクレヨン

解説 

 向かい合って絵を描く男の子と女の子。現在も「ぺんてるくれよん」のパッケージとして受け継がれているこの二人は、学童用描画材「ぺんてる」の宣伝広告用ポスターに登場したのが始まりでした。

 昭和26年、ぺんてるの担当者が地下鉄で童画が描かれた松坂屋の中吊りポスターを見かけました。松坂屋に問い合わせたところ、ポスターを制作した宮永を紹介され、ぺんてるの広告デザインを依頼したのです。その後世界中で販売され好評を博したぺんてるですが、宮永が海外を旅行中、日本人があまり行かないようなところの飛行機内でぺんてるの新聞広告を見つけて我が事のように嬉しかった、と担当者に話したそうです。

 宣伝部に所属していた宮永が手掛けた松坂屋のウィンドウディスプレイやポスター、チラシは多くの人々の人気を集めました。それらを見た他の企業からデザインの依頼が殺到し、その仕事は広告だけでなくレコードジャケットや本の装丁など様々な分野に広がっていきました。

広報はだの令和5年9月1日号掲載

週刊読売』昭和39年7月19日号表紙 「行水」

 

 行水

解説

  庭に出したたらいに水をためて、着物も草履も脱ぎ捨て、男の子が頭から勢いよく水をかけて行水している暑い夏の日の一コマを描いた作品です。

 戦前や大正時代のような着物を着た、とがった唇と上を向いた鼻の横顔の子供の絵は、宮永が描く童画にたびたび登場します。この筆でさっと描いたような作風は若いころに習得した水墨画の技法が生かされています。

 油彩美人画、グラフィックデザイン、書籍の装幀、挿絵といったさまざまなジャンルで活躍した宮永が残した作品の中にはこのように愛らしい童画が数多くあります。観る人が思わず微笑んでしまう子どもの何気ない仕草は、ユーモラスでどこか懐かしい心境になります。

 「光と影の華麗なる世界」と呼ばれる美人画の世界を確立した宮永が、一方で生涯描き続けた童画。宮永自身が心から楽しく描いていたといわれています。

 

 広報はだの令和5年8月1日号掲載 

『聖 〈ベラスケス「王女マルガリータ」 想〉 』

マルガリータ

解説

 17世紀、スペイン王フェリペ4世に重用された画家ベラスケスの代表作「王女マルガリータ」。宮永はマドリードのプラド美術館を訪れた際に出会ったこの作品に想を得て、独自の王女マルガリータを描き出しました。

 絹のドレスのなめらかな輝きやブロンドの巻き毛のふわふわした質感、茶目っ気のあるくるっとした瞳には、宮永の圧倒的な筆力とともに巧みな光彩の表現による美しさが感じられます。

 原画の背景が暗い色調の室内であるのに対し、朱地に金の装飾を施し、奥行きのある風景と黒く陰った木に豊かに実る果実を配することにより、王女の存在が際立ち、華やかな雰囲気をかもしだしています。

 「回顧のルネサンス」シリーズの一つとして位置づけられるこの作品は、宮永の新たな挑戦でした。生き生きとした王女の表情と気品溢れる姿は、観る者を絵の世界に引き込んでくれることでしょう。  

広報はだの令和5年7月1日号掲載 

『舞妓』

舞妓

解説

 淡い灰色の不規則な丸模様を背景に、はんなりと美しい舞妓が佇んでいます。宮永は、和紙の持つ偶然性がもたらす滲みの効果を意図的に出すため、フランス製の水彩紙『アルシュ』を好んで使用しました。それにより、どこか幻想的でしっとりとした背景は、舞妓の魅力をより引き立て、墨の織りなす独特の情趣を演出しています。

 結われた日本髪は墨特有のぼかしにより、ふわりと柔らかに表現され、鬢付け油で整えられた一般的な日本髪のイメージとは異なる印象です。また、目鼻立ちのはっきりした西洋風の横顔は、宮永の代名詞となる美人画を彷彿させます。

 宮永は学生時代から水墨画の修練を積み、その素養を身に付けていました。このとき培った技量は、後にポスターや挿絵、童画と幅広い分野で活かされ、多彩な才能を開花させることになります。その後、水墨画の濃淡やぼかしといった特殊な技法を駆使して確立された画風は『光と影の華麗なる世界』と称されました。

※ 広報はだの令和5年6月1日号掲載予定でしたが、紙面の都合により見送りました。

『チャイルドブック』 昭和41年5月号

解説

 幼児向けの月刊絵本『チャイルドブック』昭和41年5月号の表紙原画です。かわいらしいクマとサルを背の乗せて青い空を泳ぐ大きなこいのぼり。5月の暖かい風やこいのぼりがはためく音、喜んでいる動物たちの声まで想像が膨らみます。

 宮永は『チャイルドブック』の表紙を長年手掛け、動物たちが遊ぶ姿や季節のイベントを鮮やかな色彩で描きました。絵本を手に取った子どもたちはわくわくしながら表紙をめくったことでしょう。

 宮永は秦野に住んでいた頃、猿をはじめ色々な動物を飼い、庭先にミニ動物園を造って、近所の子供たちの遊び場として開放していました。そしてそこで遊ぶ子どもたちや動物たちをスケッチし、作品の制作の参考にしていました。

 本展示では『チャイルドブック』の表紙原画の他にも、宮永が描いた可愛い童画を多数展示しています。ぜひ美術館でご覧ください。

広報はだの令和5年5月1日号掲載

『月夜に鳥かごを持つ少女』

解説

 月夜の森の中、裸足で鳥かごを持っている少女が幻想的な雰囲気で描かれています。この作品は絵本の一場面なのか、出典は不明です。しかし、この絵一枚を見ても様々なストーリーが思い浮かび、この少女がどうなるのか展開が気になります。

 戦後、銀座松坂屋の宣伝部に仕事復帰した宮永はウィンドウディスプレイからポスターやチラシにいたるまで、ほとんどを一人で制作し、そこで人々の目に留まるような、可愛らしい子どものイラストを多く描きました。

 それらを見た他の企業からデザインの依頼が殺到し、その仕事はレコードジャケット、絵はがき、パッケージデザイン、本の装丁など様々な分野に広がっていきました。

 「光と影の華麗なる世界」と呼ばれる美人画の世界を確立した宮永が、一方で生涯描き続けた童画。宮永自身が心から楽しく描いていたという童画の世界観をこの作品から感じることができるでしょう。

広報はだの令和5年4月1日号掲載

『全日空 ジェットのハネムーン』

解説

 ふわりと纏ったウェディングドレスから差し出された手。妖精のようにキュートな女性にいざなわれ、大空に包み込まれそうです。ドレスやヴェールは大胆に省略され、背景と一体化していますが、飛行機は緻密に描かれており、この絶妙なバランスが美しくモダンなイラストレーションを生み出しています。

 1955年頃、全日空は会社の窮乏にあえいでいました。しかし宣伝担当者は、宮永独特のエレガントでなんとも言えない色っぽさの漂う女性の表情と、縦横無尽な油彩の荒いタッチを好み、ポスターを依頼しました。すると宮永は「日本人の空は日本人の手で」という会社の精神を気に入り、破格の予算で快諾したそうです。

 白無垢が主流だった時代に、ウェディングドレスを着て新婚旅行を飛行機で、という当時の人々の夢や憧れを見事に表現した宮永の感性は、今も色褪せることはありません。果てしなく続く空に想いを馳せ、希望に満ちた新生活に花を添える一枚です。

※ 広報はだの令和5年3月1日号掲載予定でしたが、紙面の都合により見送りました。 

解説

 1976年ホンコンアートフェスティバルに招待出品した作品です。宮永は主催者の招きで香港を訪れ、香港のファッションモデルを起用し作品を制作しました。イメージに合うチャイナドレスが見つからず苦労したといいます。衣装など細部までこだわる宮永らしいエピソードです。

 椅子に座り足を組んだポーズは、モデルのスタイルの良さやチャイナドレスの美しさを際立たせています。艶やかな女性の肌と光沢が美しいブルーのサテンのチャイナドレス、背景には壁紙の模様やふわふわとした毛皮などがシックな色合いで描かれていてそれぞれの質感の違いが見事に表現されています。

 同じ頃に多く描いていたヨーロッパ風のドレスを着た女性像の現実離れした華麗で耽美な雰囲気とは違った、表情豊かでエネルギッシュな魅力のある女性が描かれています。

広報はだの令和5年2月1日号掲載

解説

 荘厳な雰囲気のステンドグラスを背に鹿鳴館様式のドレスを着た女性がたたずんでいます。逆光に浮かび上がった表情は凛として美しく、ふんわりとした髪型は古典的なモチーフの中にも洗練された現代的なスタイルです。

 商業デザインで活躍していた宮永は、1970年頃、「純粋に自分だけの絵を描きたい。」と挿絵などのマスコミの仕事から離れ、油彩画の制作に取り掛かります。

 そしてその頃、ヨーロッパで見たルネッサンス絵画の古典的作風に感動し、ヨーロッパ風のドレスを着た美人画を描き始めました。舞台設定、人物の容姿や衣装など、現実離れした世界観の作品によって、宮永の理想とする耽美的な女性像を表現することに成功しました。

 本作品は70年代に取材旅行で訪れたパリのサント・シャペルのステンドグラスに惹かれ描かれた作品で、光と影のコントラストの巧みな表現が魅力的な宮永の代表作のひとつです。

※ 広報はだの令和5年1月1日号掲載予定でしたが、紙面の都合により見送りました。

 

 

このページに関する問い合わせ先

所属課室:文化スポーツ部 文化振興課 文化交流担当
電話番号:0463-86-6309

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