●広報はだの5月1日号2面 広める 自転車人 「住民とサイクリストの共存は、 まちの新たな可能性」 大塚 毅 さん(36歳・(公社)秦野青年会議所理事長)  「秦野サイクルシティ構想」。ありそうでなかったまちづくりは、3年前に動き出した。本格的なロードバイクを運転するサイクリストは、ヤビツ峠をヒルクライムの聖地と呼び、遠方から足を運ぶ。しかし、その呼び名とは裏腹にマナーやモラルの課題が浮き彫りになり、地域住民との間で、自転車に対する意識のズレが広がっていった。 「まずは、その差を埋めたいと思ったんです」  構想を土台に、青年会議所が手始めに仕掛けたのが、「はだのサイクルフェスタ」だ。パフォーマンスショーやトークセッションなど、にぎやかなイベントの数々。その中に、自転車のルールやマナーなど、正しい運転の大切さを散りばめた。 「昨年は、子供も気軽に参加できるレース体験など、ゲーム性も加えました。サイクリストにマナーを守ってもらうことはもちろんですが、それ以外の方に、自転車を『安全で楽しい』と思ってもらうことも、大切なテーマなんです」  マナーは、意識だけの問題ではない。そこで昨年、自転車置き場にもなる「サイクルベンチ」を設計。ロードバイクが壁や木に無造作に立て掛けられることの防止に一役買った。 「公募で集まった方々に作ってもらい、市内各所に設置しました。意識と環境、両方を変えることが解決の近道だと実感しました」  ヤビツ峠以外にも設置したのは、先を見据えた思いがある。今年は、フォトスポットや安全・マナー上の注意スポットを記した市内全域の自転車マップを作成予定。一昨年実施した、市民ディスカッションでの意見の一つが実を結んだ。 「まち全体を、みんなで楽しんでもらいたい。人を呼び込み、健康や環境にも良く、誰でも気軽に移動できる自転車には、その可能性がある。市民の秦野愛を形にする、大きな力になると信じています」 つくる 自転車人 「自転車を娯楽にすれば、 世界が変わる」 勝俣 俊二 さん(32歳・㈱コッチ代表)  堀山下の住宅地にひっそりとたたずむ町工場。正面の無機質な外壁に小さく描かれた「Cocci Pedale」の手書き風文字とイラストが示すのは、テントウムシ。シンプルながら、遊び心が伝わってくる。 「イタリアでは、『幸せを呼ぶ』って意味があるんです」  実はこれ、オーダーメイド自転車の商品名。工場内に入ってみると、外観とは打って変わり、カラフルな部品が所狭しと並んでいる。キャッチコピーは、「世界に一台の自転車をウェブ上で簡単にデザイン」だ。 「例えるなら、服や靴。街乗り自転車を、オシャレのアイテムとして気軽に楽しんでもらいたい」  勝俣さんは、元々本格的なロードバイクを運転していたサイクリスト。海外のレースにも身を投じる中、ハワイでのサイクリング風景に胸を打たれたという。 「日本では一人で走るイメージが強いですが、そこでは、若者も年配の方もみんなで仲良く運転するんです。だから、ボディランゲージでのマナーや譲り合いが自然と身についている」  日本でも、そんな光景が見たい。そのためにはまず、自転車そのものをもっと楽しめるようにしよう。そう思った勝俣さんは、志を同じくする技術者とデザイナー、システムエンジニアらを集めて、一昨年9月に自転車メーカーを設立。現在は20〜30代の若手5人で、いわゆるママチャリとロードバイクの中間に当たる、性能と価格が手頃な「クロスバイク」を全国から受注している。 「純粋に、移動そのものを楽しんでもらいたい。手軽にあちこち行ける自転車なら、『こんな場所があったんだ』と、秦野のいいところにも気付きやすいと思いますよ」  今後は、自転車の魅力を伝えるイベントにもぜひ協力したいと話す勝俣さん。あなたも、幸せを呼ぶ自転車ライフへひと漕ぎしてみませんか。 ▲盛り上がるパフォーマンスショー ▲スタンドのないロードバイクも置けるサイクルベンチ ▼一つ一つ手作業で丁寧に ▲色の組み合わせが自由にできるCocci Pedale