南地区
弘法の清水
 秦野市内には、湧水が多く見られ、その水は古代から人々の暮らしに利用されてきた。1985年<昭和60>には、秦野盆地湧水群(ゆうすいぐん)が環境庁より「全国名水百選」に選定された。湧水群の中で特に有名なのが、伝説の残るこの弘法の清水である。
 昔、一人の旅の僧がある農家に立ち寄り水を求めた。しかし、あいにくその農家では水を切らしていて、その家の娘が手桶を下げて水を汲みに行った。僧が待ちわびていると、重そうに手桶を下げて娘が帰ってきた。のどを潤(うるお)した僧は、何事かを唱え、庭に杖を突き立てた。するとその杖の先から清水がこんこんと湧き出した。後に旅の僧が弘法大師と分かり、以来この清水は「弘法の清水」と呼ばれるようになったという。また、井戸の形が臼(うす)に似ているので、臼井戸と呼び小字(こあざ)名にもなっている。