◯2面 広報はだの 平成26年(2014年)9月1日 2 ひと×地域 生きがいのある暮らしへ 触れ合いを求めて誕生  「次は誰の番かな」「もう1枚大丈夫ですよ」楽しそうな声が室内に飛び交う。ここは、NPO法人「みきフレンド」が運営する介護施設「あふり」。デイサービスの利用者が職員やボランティアと百人一首の坊主めくりに挑戦している。  「地域との触れ合いを大切にしたいと思い、母と一緒に活動してきました」 と話すのは、理事長の小森谷健兒さん(43歳・名古木)。健兒さんの母、君江さん(68歳・西田原)は、障害のある長女、実季さん(24歳)の誕生を機に福祉に興味を持ち、ホームヘルパーの資格を取得。自分と同様に障害のある子供を持ちながら、介護の仕事をする母親たちに呼び掛け、仕事中は5、6人で互いの子供の面倒を見た。日々の生活の中で、介護と育児の拠点が一つだったらと願い、地域の協力を得て現在の、みきフレンドの原型を築いた。  「必要に迫られて、家族ぐるみで地域の皆さんと無我夢中でやってきたことが、今の私たちの活動に結び付いていますね」  君江さんは目を閉じて振り返る。  実季さんの名前が由来の、みきフレンドは、現在、市内3施設で約70人の高齢者や障害者に介護サービスを提供している。また、ボランティアが指導する教室や季節の行事などを取り入れ、地域との触れ合いの場をつくりだしている。 気付きと役割を大切に  「1日があっという間ですよ。ダンスや歌でこんなに気持ちが明るくなるなんて、始めは想像できませんでした。次の利用日が待ち遠しいくらいです」  2年前から施設を利用している橋本和子さん(88歳・鈴張町)は、はつらつと話す。  夏休みを利用し、ボランティアとして施設を訪れた東中学校3年生の重田匠哉さんは、  「お世話をするつもりで来ましたが、一緒に楽しく食事をしたりゲームをしたりするうちに、逆に元気をもらって驚きました」 と心境の変化を語る。家にいる祖母の姿を重ね、改めて大切にしたいと思ったという。  「高齢者と若いうちに接することで、自分を見つめ直し、何かに気付くことが大切。これが行動の第一歩につながります」  あふり管理者の安藤良太さん(36歳・千村三)は、力を込めて話す。  6年前から、利用者や家族と一緒にボランティア活動として行っているごみ拾いも、地域との関わりを目的としている。8月中旬、西田原付近のごみ拾いに、約20人が集まった。毎回参加している利用者の小澤里美さん(45歳・東田原)は、団体の中心核。大きな袋を持ちながら要領よく黙々と拾っていく。  「いつもありがとう」「お疲れ様」顔馴染みの近所の人が口々にあいさつをすると、顔を緩めて、元気に手を振る。また、  「今度は、この道に入るよ」 と遅れがちな仲間を気に掛けながら進んでいく。  「みんなと話せることがとてもうれしい。これからも続けていきたいです」  屈託なく笑う小澤さん。自分が何かに役立っているという気持ちが少しでも持てれば、それは生きる活力となる。ごみ拾いに励む小澤さんの姿がそれを証明している。 認め合い支え合う  「高齢者や障害者はサービスを受ける側だと考えられがちですが、できることはたくさんあります。そのことを地域の方にまず、理解してほしいです」  互いに認め合う心があれば、それが行動の後押しになると強調する健兒さん。  「やがては、高齢者と障害者が一つ屋根の下で、家族や地域と支え合いながら、生きがいや役割を持って暮らせればいいですね」 と目を輝かせる。介護する人もされる人も自分らしく生き、いつも幸せを感じていることが理想だという。  生活の必要に迫られ家族や地域と共に歩んできた、みきフレンドの歴史には説得力がある。一人一人が支え合う生きがいのある暮らしの実現のため、今後の活動に期待する。 利用者と、かるたを楽しむ職員やボランティア(介護施設「あふり」) 歌に合わせて、振り付けをする橋本さん(左) 利用者と楽しく語らう健兒さん 高齢者と1日を過ごした重田さん(左) ボランティアの中学生に指導する小澤さん(左から2人目)